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経 錦 -Tatenishiki-

まず錦【にしき】とは、たくさんの色糸を使用した彩り華やかな文様織物の総称です。

経錦【たてにしき/けいきん】とはこの錦の一つで、経糸によって地と文様を織り成します。他には緯錦【ぬきにしき/よこにしき】があり、緯糸によって地と文様をつくります。

数色の経糸を一組として、地または文様に必要な経糸を表に浮かせ、その他を裏に沈めるために二種類の緯糸(地組織をつくる母緯【おもぬき】、文様を表す影緯【かげぬき】)を交互に通しながら織り進めていきます。

蜀江錦帯(重文 飛鳥時代)


歴史では、中国の前漢時代(前206~後8)にはすでに高度な技術の経錦が織られていたとされ、日本では7世紀飛鳥時代の法隆寺に「蜀江錦」【しょくこうきん】が伝えられています。

数色を1組として扱うので、通常より細い糸の扱いや経糸本数の多さから製織が究めて難しく、文様の大きさや色数の制限があるなど大変高度な技術を要するため、比較的製織が容易で、色数や文様の大きさが自由な緯錦の登場とともに奈良時代以降次第に衰退していきました。


西陣では明治時代から、龍村平蔵氏等により研究、復元され、以降現代の技巧を加えた新しい経錦が織られるようになりました。

「経錦」の特徴とは

経錦は、表だけでなく裏にもその美しい文様と色彩が現れるのが特徴の一つです。使用しない裏面もまた面白いのです。

また、裏に糸が渡らないので生地がなめらかになり、絹本来の風合いや光沢を楽しむことができます。

絵緯糸(文様をつくる緯糸)を使用しないので軽く、経組織のため絞め易くシワに成りにくい特性があります。

このような落ち着いた品格のある経錦は、従来のお茶席からモダンな着物シーンにと、現代生活に溶け込みやすい装いが楽しめると思います。

鼎の経錦

紋織物の祖とも言われる経錦に新しい技巧と現代のデザインを加え
「鼎の経錦」を創りました。

経糸にはブラタク糸を100%使用

バストス工場

糸の品質が製品の品質、と考える程私たちは「経糸」にこだわりを持っています。

ブラタク糸は、ブラジルに残る唯一の製糸会社「ブラタク製糸株式会社」で生産されている絹糸です。現在は創業70年を超え、ブラジル拓植組合の製糸部門が独立した会社です。元は日本から移民した人々が伝えたことが始まりです。

ブラジルの気候が(蚕の餌となる)桑の葉を育てる環境に適しており、年間を通じて良質な蚕が生産されています。

製品の95%は輸出で、フランス、イタリア、日本等で占められています。フランスの著名ブランドの絹製品原料の90%はブラタク社で占められています。

輸出為替のレアル高、世界的な生糸消費の落ち込み、加えて中国製品の流通など数々の逆風の中ですが、『正直な仕事』『品質で競争力をつける』という信念で企業努力を続ける会社です。


世界でも最高級の絹糸と謳われる、ブラタク糸。一般的に4Aランク以上が高品質とされていますが、鼎では帯に最も適している5Aランクの生糸を経糸に100%使用しています。

  • 手作業にて繭選別

  • 繭糸を引きだす工程

  • ブラタク生糸

3色の経色で12通りの表現

色見本:紫/ネズブルー/黄

鼎の経錦は、3色の経糸を使用しています。

組織は経錦の場合、畦組織【あぜそしき】または綾組織【あやそしき】を使用することになっています。

左図は、A:ネズブルー、B:紫、C:黄の3色×2組織パターンの色見本です。

裏には表の逆配色が現れます

「ABアゼ」とは、ネズブルー×紫で平組織を織ったパターンです。使用しない黄は裏に沈められ表からは見えません。このように、色数で6色、組織で2パターンの合計12通りの表現が可能になっています。

例えば、一口に「紫」と言っても、たくさんの色があり、また糸の染め上りも微妙に異なります。そのような2色以上の色糸を『織混ぜる』とどんな色・光沢になるのか、織ってみなければ分からない所が、難しくもありまた新しい発見に繋がる面白さでもあります。